前回からの続きです。
最高裁は本件に関し、以下のような判断を行いました。
・企業会計原則は、過去の損益計算を修正する必要が生じても、過去の財務諸表を修正することなく、要修正額を前期損益修正として修正の必要が生じた当期の特別損益項目に計上する方法を用いることを定め、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(平成21年12月4日企業会計基準第24号)も、過去の財務諸表における誤謬が発見された場合に行う会計処理としては、当該誤謬に基づく過去の財務諸表の修正再表示の累積的影響額を当期の期首の残高に反映するにとどめることとし・・・ている。企業会計原則等におけるこれらの定めは・・・過去の損益計算を遡って修正することを予定していないものと解される。
・法人税法も、事業年度における所得の金額を課税 標準として課税することとし(21条)、確定した決算に基づき各事業年度の所得の金額等を記載した申告書を提出すべきものとしており(74条1項)、国税通則 法も、当該申告書の提出による申告をもって、当該事業年度の終了時に成立した法 人税の納税義務につき納付すべき税額が確定することとしている(15条2項3号、16条1項1号及び2項1号)。
このように、法人税の課税においては、事業年度ごとに収益等の額を計算することが原則であるといえるから、貸金業を営む法人が受領し、申告時に収益計上された制限超過利息等につき、後にこれが利息制限法所定の制限利率を超えていることを理由に不当利得として返還すべきことが確定した場合においても、これに伴う事由に基づく会計処理としては、当該事由の生じた日の属する事業年度の損失とする処理、すなわち前期損益修正によることが公正処理基準に合致するというべきである。
・法人税法は、事業年度ごとに区切って収益等の額の計算を行うことの例外として、例えば・・・青色申告書を提出した事業年度 の欠損金の繰越し(57条)及び欠損金の繰戻しによる還付(80条)等の制度を設け、また、解散した法人については、残余財産がないと見込まれる場合における期限切れ欠損金相当額の損金算入(59条3項)等の制度を設けている。このような特別の規定が、破産者である法人についても適用されることを前提とし、具体的な要件と手続を詳細に定めていることからすれば、同法は、破産者である法人であっても、特別に定められた要件と手続の下においてのみ事業年度を超えた課税関係の調整を行うことを原則としているものと解される。
そして、同法及びその関係法令においては、法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし、その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合に前期損益修正と異なる取扱いを許容する特別の規定は見当たらず、また、企業会計上も、上記の場合に過年度の収益を減額させる計算をすることが公正妥当な会計慣行として確立していることはうかがわれないことからすると、法人税法が上記の場合について上記原則に対する例外を許容しているものと解することはできない。そうすると、当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは、公正処理基準に従ったものということはできないと解するのが相当である。
・これを本件についてみると・・・その後の事業年度に本件債権1が破産手続において確定したこと により、本件各事業年度に遡って益金の額を減額する計算をすることは、本件債権1の一部につき現に配当がされたか否かにかかわらず、公正処理基準に従ったものということはできない。したがって、上記の減額計算を前提とする本件各更正の請求が国税通則法23条1項1号所定の要件を満たすものでないことは明らかである。
さて、今回の最高裁の判決は、企業会計原則の定め、法人税法の規定、従来からの税務上の考え方に沿ったものであり、判決文に記載されている根拠についても特に目新しさは感じませんでした。
最高裁が判決で根拠、結論をきっちりと明らかにしたことには意義があると思いますが、内容としては予想どおりのものだった、ということになります。
むしろ、大阪高裁の判決が、従来からの考え方に一石を投じたもの、特殊なものだったというべきでしょう。
以上、多くの会社の税務処理にも関わる可能性がある非常に重要な最高裁判例ですので、2回にわたって詳細にご紹介いたしました。
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