前回に続いて、財産債務調書制度の記事です。
1.財産債務調書に記載する価額はどのような金額を記載すれば良いのでしょうか?
2.価額が間違っていたらどうなるのでしょうか?価額を低く記載していたり、高く記載していたら問題になるでしょうか?
今回は、これらの点に関する記事です。
まず1.の点ですが、法律上、「価額」は、年末における「時価」、又は取得価額や売買実例価額などを基に財産の現況に応じて合理的な方法によって算定した「見積価額」、を記載することになっています。
詳しくは、国税庁の法令解釈通達や「財産債務調書の提出制度(FAQ)」のⅢ(Q19〜)、Ⅳ(Q40〜)が参考になります。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hotei/130329/01.htm
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/zaisan_saimu/pdf/zaisan_faq_r5.pdf
もちろん、ここで定められているようにきちんと価額が記載できていたら良いのですが、そうでない場合にはどうなるのでしょうか。
2.の質問に対する基本的な回答としては、価額の記載誤りそれ自体では具体的にペナルティがあるわけではない、ということになるのではないかと思います。
前に、提出期限内に提出がない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産若しくは債務の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産債務に関する所得税等の申告漏れが生じたときは、その部分の過少申告加算税等について5%加重されることになっていることをご説明しました。
しかし、これをよく読むと、財産債務調書を提出し、そこに記載すべき財産債務及びその重要事項について記載さえしていれば、過少申告加算税等について5%加重されることがないことが分かります。
つまり、価額が多少誤っていたとしても、財産債務の重要事項についての記載がないことにはならないのだとすれば(※もしこの前提が変われば結論も変わります。)、過少申告加算税等について5%加重されることがないということになるでしょう。
もっとも、他方で、たとえば額面1億円の債権や債務の価額を1000万円と評価して記載した財産債務調書を提出したような場合であれば、税務署側としては(時価等が1億円であるとの前提で)そもそも残り9000万円については記載がないという解釈のもとで、過少申告加算税等について5%加重を適用してくる余地が事案によってはあるかもしれませんのでご注意ください(可分な財産債務の場合に起こりえる問題点です。)。
※そもそも、財産債務調書に記載すらない場合、重要事項が記載されていない場合であっても、その財産債務に関する所得税等の申告をきちんとしていれば、過少申告加算税等が課されないため、5%加重されることもありません。
以上のとおりですので、価額を1円でも誤ったらペナルティを受けるのではないか・・・というような不安は抱く必要がないだろうと思います。
お分かり頂けたでしょうか?
なお、これまで説明した財産債務調書制度によく似たものに、「国外財産調書制度」というものがあります。
こちらの概要は、以下の国税庁のHPを確認しておいてください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/index.htm
以上4回にわたり、財産債務調書制度についてご説明しました。
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