前回に引き続いて財産債務調書制度の話です。
さて、財産債務調書を提出しなかったら、どうなるのか?というところが、納税者にとってはまず気になるところでしょう。
今のところ、提出漏れについて刑事罰を受けるようなことはありません。
しかし、提出期限内に提出がない場合、または提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産若しくは債務の記載がない場合(重要な事項の記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その「財産債務に関する所得税等」の申告漏れが生じたときは、その部分の過少申告加算税等について5%加重されることになっています。
※これによれば、提出期限内に財産債務調書の提出がない場合などであっても、その財産債務に関する所得税等の申告をきちんとしたときは、過少申告加算税等が課されないので、5%加重もないということになります。過去に財産債務調書の提出漏れ、記載漏れがあったとしても、その財産を隠すのではなく、財産債務調書を期限後提出するか、期限後提出をしなかったとしても所得税等の申告はきちんと行いましょう。
なお、ここでいう所得税等の「等」には、相続税や亡くなった人の所得税(準確定申告)は含まれません。亡くなった人が財産債務調書の提出、記載を怠っていたとしても、それを理由に相続人の過少申告加算税等の加重をするのは酷だからでしょう。
さて、上記の「財産債務に関する所得税等」とは具体的に何を指すのかというと、以下の所得に関する所得税等です。
・財産から生じる利子所得又は配当所得
・財産の貸付け又は譲渡による所得
・財産が株式を無償又は有利な価額で取得することができる権利等(いわゆるストックオプション等)である場合におけるその権利の行使による株式の取得に係る所得
・財産が生命保険契約等に関する権利である場合におけるその生命保険契約等に基づき支払を受ける一時金又は年金に係る所得
・財産が特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権その他これらに類するもの(以下「特許権等」といいます。)である場合におけるその特許権等の使用料に係る所得
・債務の免除による所得
・上記1から6までの所得のほか、財産債務に基因して生ずるこれらに類する所得
したがって、「財産債務に係る所得税等の申告漏れ」とは、財産債務に直接基因して生ずる上記の所得に関して、所得税等の申告がなかったこと又は申告額が過少であったことをいいます。
なお、債務に関する所得税の申告漏れとはどういうことか分かりづらいかもしれませんが、債務者が債権者から債務免除を受けたために、債務者に一時所得が発生しているのに、その全部又は一部について申告をしなかったような場合です。
大体お分かり頂けたでしょうか。
財産債務調書制度の記事は、さらに次回に続きます。