今回は、令和2年6月26日最高裁判所第二小法廷判決をご紹介します。
この最高裁判決は、 地方団体の徴収金につき、「被相続人」に対して既に納付又は納入の告知がされていた場合に、その後、「相続人」に対して納付等を求める旨の通知がされても、地方税の徴収権について、地方税法に基づく消滅時効の中断の効力が生じないものと判断したもので、実務上、重要な判決だと思われます。
この件に関して、最高裁は、概ね、以下のとおり判断しました。
・地方団体の長は、納税者又は特別徴収義務者から地方団体の徴収金を徴収しようとするときは、これらの者に対し、納付又は納入の告知をしなければならないとされ ている(地方税法13条1項)。そして、徴税吏員は、納税者等が納期限までに地方団体の徴収金を完納しない場合には、督促状を発しなければならないとされ(同 法726条1項等)、さらに、督促を受けた滞納者がその督促状の発せられた日か ら起算して10日を経過した日までにこれを完納しないときには、滞納者の財産を 差し押さえなければならないとされている(同法728条1項1号等)。
このよう に、地方団体の徴収金の徴収について段階的な手続が定められていることに鑑みると、同法において、税額等が確定し、その徴収手続として納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金に関し、再度同告知がされることは予定されていない。
・また、地方団体の長による納付又は納入に関する告知は、私人による催告とは異 なり、地方団体の徴収金に関する徴収手続の第一段階として、法令の規定に基づき一定の手続と形式に従って行われるものであることから、同法18条の2第1項1 号は、これについて特に消滅時効を中断する効力を認めることとしたものと解される。
このような同号の趣旨をも併せ考慮すると、時効中断の効力は、 最初に行われた納付又は納入の告知についてのみ生じ、その後、再度同様の通知がされたとしても、その通知は単なる催告としての効力を有するにとどまるものと解するのが相当である。
・相続があった場合、・・・相続人の利益保護等の観点から、督促や差押えに先立ち、相続 人に対し改めて納付等 を求める旨の通知をしたとしても、その通知は単なる催告としての効力を有するに とどまるものと解すべきことは、上記と同様であり、被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収 金につき、相続人に対する通知は消滅時効の中断の効力を有しないというべきである。
・本件において、Aに対して既に納付の告知及び督促がされた本件租税債権につき、相続人である上告人に対してされた本 件承継通知は、時効中断の効力を有するものではない。
・以上によれば、本件差押処分がされた時点で、本件係争債権は時効により消滅していたというべきであり、本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分は、租税債権が存在しないにもかかわらずされた違法な滞納処分として、取り消されるべきである。
さて、個人的には、この最高裁の判断は、地方税法の条文に即したものであり、明快かつ論理的だと考えております。
地方自治体が繰り返し納付告知を繰り返し行うことによって容易に時効中断ができるという安易な結論にならなかったのもよかったと思います。
自治体側としては今回の判決を踏まえると、対応に苦慮するケースもあるかもしれませんが・・・。
次回に続きます。