ときどき、相続時精算課税制度を適用した後のことについて質問を受けるので、記事を書いてみました。
相続時精算課税制度については、国税庁の「No.4103相続時精算課税の選択」「No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)」や、当HPの「相続時精算課税制度を利用すると、相続の放棄はできなくなるのか?」の記事もごらんください。
さて、本題ですが、ある人からの贈与について、相続時精算課税制度を選択する届出書とともに贈与税の申告をした後に、同じ人から贈与をうけた年は、申告期限内(翌年3月15日まで)に贈与税の申告をすることが必要となります。
ここで注意をしなければいけないのは、贈与を受けた金額にかかわりなく、贈与税の申告をしなければならないことです。
相続時精算課税制度の適用を受けることで、累計2,500万円(特別控除額)までの贈与財産については贈与税がかからないことになりますが、累計2,500万円に達していなくても、贈与税の申告をしなければならないのです。
さらには、相続時精算課税制度の選択をしているということは、通常の暦年課税の適用がないことを意味しますので、暦年課税の基礎控除額110万円に達していなくても、贈与税の申告をしなければならないのです。
相続時精算課税制度の対象となった贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降は全てこの制度が適用され(暦年課税の適用はありません。)、また、この制度の贈与者が亡くなったときの相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算することになります。
そこで、国税としては、相続時精算課税制度の選択以後、その制度の対象となる贈与者から贈与された時点での贈与財産の評価額及び累計額がきちんと確認できるようにしておく必要があるため、対象となる贈与者からの贈与があった年については、必ず贈与税の申告をするように求めているものと理解されます。
贈与を受けた金額が累計2,500万円以下だったから、あるいは少額だったからといって、贈与税の申告を忘れると、その贈与については、特別控除が使えなくなりますので、一律20%での贈与税が課税されます(この贈与税については、最終的には相続時に精算されることにはなりますが。)。
しかも、延滞税、無申告加算税が課されることになります。
なお、贈与税の申告を申告期限内にしなかったため、適用を受けなかった特別控除の額は、翌年以降に繰り越すことができるとされています。
以上のように、相続時精算課税制度を選択した後に、同じ人から贈与をうけた年は、その金額にかかわりなく、申告期限内(翌年3月15日まで)に贈与税の申告をしなければいけないということを、忘れないようにしてください!