今回は、所有者不明土地等の解消に向けた民法等の改正のうち、相続放棄関連の改正についてご説明します。
民法940条は以下のとおり、改正されます。
現行法:
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
↓
改正法:
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第925条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
まず、相続放棄者が財産管理の義務を負う終期について、今回の改正で具体化、明確化されています。
「放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで」
↓
「相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまで」
次に、今回の改正で、相続放棄者が財産保存の義務を負うのは、相続放棄の時点で現実に占有している相続財産であることが明確にされました。
改正前は、相続放棄者が放棄後も財産管理義務を負う相続財産の範囲・対象が不明確であったため、相続放棄をしても、自分が管理、占有していない相続財産も含めて、全ての相続財産について、相続人に引き渡しができるまでは、財産管理義務が続くと考えられており、この点が相続放棄を選択するうえでひとつの障害となることがありました。
例えば、相続人が全員相続放棄をして相続人が不存在となった場合、相続財産管理人が誰からも選任されず、結果的には相続放棄者にこの財産管理義務が半永久的に続く結果となるおそれがあり、しかも、相続財産に建物が含まれている場合には、相続放棄後も建物の朽廃により何らかの事故が起きたときに、相続放棄者が当該建物の管理者として責任を問われるのではないかとの懸念もあったわけです。
改正後も、民法918条1項では「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない」こととされているわけですが(この点は改正されていません)、今回の改正では、相続放棄の時点で現実に占有していない相続財産については財産保存義務を負わないこととなるため、相続放棄を考えている推定相続人にとっては(相続財産の管理義務は一応あるものの)相続財産を占有するのはできるだけ避けたほうがよい、という考え方が出てくるように思われます。
熟慮期間中はこの点に注意をしたうえで、相続放棄等について検討する必要がありそうです。
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