2026年施行!所有不動産記録証明制度で相続手続きが簡単に

 所有不動産記録証明制度とは?

2026年2月2日より、不動産登記法改正に伴い「所有不動産記録証明制度」(仮称)が開始される予定です。

この制度により、特定の名義人が全国に保有している不動産の一覧が記載されている「所有不動産記録証明書」の発行をしてもらえるようになります。

この新制度は、相続手続きの簡素化や資産管理の効率化に寄与すると考えられています。

制度導入の背景

我が国では、高齢化や人口減少に伴い、相続未了や住所変更未登記による所有者不明土地が増加しています。この状況は、公共プロジェクトや民間の不動産取引に支障をきたし、社会問題化しています。

この問題を解決するため、2024年4月より相続登記の義務化が実施されており、あわせて新たに導入されるのがこの「所有不動産記録証明制度」です。

制度の仕組み

この制度では、不動産登記簿の情報をもとに、名義人本人やその相続人が、法務局に、特定の名義人に関する「所有不動産記録証明書」を発行してもらうことができます。

この証明書には、名義人が日本全国で所有する土地や建物が一覧化されていますので、不動産調査や相続手続き、資産管理を大幅に簡略化、効率化できるものと期待されています。
  

証明書を取得できる人

  • 不動産名義人本人
  • 不動産名義人の相続人
  • これらの代理人

 

法人も利用できる

法人も自社所有物件の一覧を証明書として発行してもらうことができます。
(なお、法人については、2024年4月1日から会社法人等番号の登記事項への追加が始まっており、2026年4月1日からは商業登記で法人の住所等の変更を登記すると、不動産登記にもその変更が反映されるようになります。)

証明書発行窓口

法務局で発行してもらえます。手数料が必要となりますが、具体的な金額はまだ公表されていません。

制度のメリット

  1. 全国の不動産情報の一元管理

名義人が所有する日本のすべての不動産を一括で確認できるため、複数地域にまたがる不動産の管理が効率的になります。名義人自身が財産状況を把握し、管理に役立てるだけでなく、生前贈与や遺言作成など将来に向けた計画の作成にも役立つでしょう。

  1. 相続手続きの効率化・迅速化

被相続人名義のすべての不動産を一覧化できるため、相続財産調査が容易になります。
また、相続登記漏れも防ぎやすくなるでしょう。

注意点と課題

  1. 登記情報更新の必要性

登記簿上の名義情報(氏名・住所)が古い場合、不動産が証明書から漏れてしまう可能性があります。例えば、結婚や転居後に氏名や住所の変更登記をしていない場合に、該当物件が漏れる可能性があると考えられます。なお、2026年4月1日から、住所や氏名の変更があった日から2年以内に変更登記を行わなければならないことになっています(変更登記を行わない場合、5万円以下の過料が科される可能性があります)。

  1. 制度利用者の制限

プライバシー保護の観点から、上記のとおり、証明書を請求できる者は限られています。
誰でも他人の不動産情報を取得できるわけではありません。

  1. 従来方法の必要性

新制度導入後も、市区町村単位で発行される「名寄帳」や固定資産税通知書による調査が必要となる場合があり、これらの重要性が失われるわけではありません。
これらの書面には、未登記の物件でも記載されている可能性があります。

想定される具体的な利用シーン

設例1:相続手続きの場合

Aさんは父親を亡くし、父親名義の土地や建物を調査中です。「所有不動産記録証明書」を取得することで、父親名義の全国すべての不動産を一覧で確認できました。これにより、スムーズに漏れなく相続登記を進めることができました。

設例2:生前対策の場合

BさんはB名義で日本全国に多数の土地、建物を持っています。遺言作成時に「所有不動産記録証明書」を活用し、自分名義の不動産を正確に把握して漏れなく遺言することが出来、また生前贈与の計画も効率的に進めることができました。Bさんは、自筆遺言書に、財産目録の一つとして所有不動産記録証明書を添付刷る形で利用しました。

今後期待される効果

弁護士としては、ようやくこういったことができるようになるのかというのが正直な感想ですが、この制度はなかなか画期的なものといってよいでしょう。
この制度の導入により、不動産管理と相続手続きの効率化が進み、所有者不明土地問題の解決にも貢献することが期待されています。
実際、私も、これにより、資産管理・相続手続きの円滑化、不動産取引や公共事業の円滑化の促進につながることは間違いないだろうと考えております。

 

さて、所有不動産記録証明制度で全国の不動産を漏れなく把握することができたとしても、次は相続人間でそれらの不動産について、遺産分割の協議をしないといけません。
遺産分割のご相談は、クーリエ法律事務所へどうぞ!