前々回、前回からの続きの記事です。
今回も千葉地裁平成30年1月16日判決についての考察です。
・少し気持ちが悪いのは、今回のような裁判所の判断では、原告が平成20年分所得税について、仮に部分的にでも不正の行為に及んで税額を少しでも免れていた場合には、徴収権の時効期間が7年となるために徴収権が時効消滅しておらず、損失の期限後申告をすることができたはずとのアンバランスな結論が導かれてしまうところですが、法定納期限から6年または7年経過の所得税について納税者に損失ではなく納付税額が発生していたケース(当然このようなケースでは不正の行為がないこと、つまり法定納期限から5年で徴収権が時効消滅することは、納税者に有利に働きます。)を考えれば、そのような結論もやむを得ないところでしょう。
・そもそもの点でいえば、今回の判決では、「本件調査当時における平成20年分所得税の期限後申告の可否」自体が争点として扱われているのですが、仮に期限後申告ができたはずであるとの結論になった場合、税務調査の際に税務署員が納税者に誤った回答をしていたことにはなるのですが、それが一体どういう根拠で税務署の平成21年分の所得税の決定処分の取消理由になり得るのか(信義則でしょうか?)、その点がどのように主張、整理されたのかが明確ではない点が、元審判官として個人的に気になりました。
以上のように、色々と気になる点がある裁判例でしたので、3回にわたって記事を書かせて頂きました。
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