重加算税の賦課決定処分を取り消した国税不服審判所の平成30年5月31日裁決(1)

本日は、重加算税の賦課決定処分を取り消した国税不服審判所の平成30年5月31日裁決のご紹介です。

http://www.kfs.go.jp/service/JP/111/02/index.html

 

事案の概要は、以下のようなものです。

・審査請求人は、兄弟会社の債務を引き受け、その兄弟会社に対する債権を放棄して、貸倒損失を計上して、損金に算入し、翌期へ欠損金を繰り越す旨の法人税の確定申告をし、次の事業年度には、その欠損金の額を所得金額から控除して確定申告をしました。

・その後、審査請求人は、原処分庁の指摘を受けて、その債権放棄額について、寄附金の額に該当するとして前と後の事業年度の修正申告をしました。

・ところが、原処分庁は、債権放棄額を貸倒損失勘定に計上したことについて、隠ぺい又は仮装に該当するとして、重加算税の賦課決定処分を行ったため、審査請求人は、事実の隠ぺい又は仮装はないとして、重加算税の賦課決定処分(のうち過少申告加算税相当額を超える部分)の取消しを求めました。

 

 

国税不服審判所は、概ね、以下のような判断をしました。

 

・本件各確定申告における所得金額が過少となった原因は、本件貸倒損失額が、本来寄附金の額に該当するにもかかわらず、請求人が、これを寄附金の額に該当しないとして平成24年2月期の当初申告をした点にあると認められる。

そうすると、請求人が、本件貸倒損失額について、寄附金の額に該当することを認識していたと認められない限り、本件各確定申告は、事実を隠ぺい又は仮装したところに基づくものであるとは認められない。

・この点について、原処分庁は、請求人が、本件債務免除益に係る課税を避けるために本件分割法人整理を検討したことをもって、請求人が、本件貸倒損失額について、寄附金の額に該当することを認識していた旨主張する。

しかしながら、本件通達規定(※後記参照)によれば、兄弟会社等(請求人と本件分割法人は、ここにいう兄弟会社の関係にあるものと認められる。)の債務引受け等であっても、相当な理由があると認められる場合には、その債務引受け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しない。

上記相当な理由については、①当該兄弟会社の経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を被るか否か、②債務引受け等を行った支援者がこれを行うことに相当な理由があるか否かなどを総合的に検討して判断すべきと解されるから、当該支援者が、多額の収益に対する課税を回避するために当該債務引受け等を行ったことのみをもって、直ちに、当該債務引受け等により供与する経済的利益の額が、寄附金の額となるものではないというべきである。

したがって、請求人が、本件債務免除益に係る課税を避けるために本件分割法人整理を検討したことをもって、直ちに、請求人が、本件貸倒損失額について、寄附金の額に該当することを認識していたとはいい難い。

・これらの事情を総合すると、請求人は、本件債務引受け及び本件債権放棄を行うことには、本件通達規定の定める相当な理由があるなどとして、本件債権放棄の額について、寄附金の額に該当しないと認識していた可能性があるというべきである。

 以上

 

※法人税基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》は、本文において、法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を被ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする旨定め、注書において、当該子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる旨定めています。

 

長くなりましたので、次回に続きます。