遺言で会社に対する株式などの遺贈を考えているひとは税金に注意を(2)

前回の続きです。

今回は、会社に遺贈するのがその会社が発行した株式である場合の税金について、説明します。

 

ⅰ)会社の税負担について

この点については、前回のⅰ)とは事情が異なります。

会社にとっての自己株式の取得については、現在の会社法や法人税法のもとでは資本取引(資本の払い戻し)であるとして益金、法人税は発生しないものと基本的に考えられているところだとは思います。

しかしながら、会社に株式の時価相当額の益金が発生したとして法人税がかかるとの見解も見受けられるところではあり、この点は若干不明確なところがあります。

 

ⅱ)故人の税負担について

前回のⅱ)と同じく、亡くなった故人については、遺贈により、その財産を時価相当額で(相続税評価額ではないためより高額になる場合があります)会社に譲渡したものとみなされ、取得時からの値上がり益がある場合には、その譲渡所得について所得税がかかることになります。

それだけでなく、発行会社に対する自己株式の譲渡であるために、譲渡代金のうち一部については会社から配当を受けたものとみなされ、配当所得がかかってしまう場合もあります(この場合、会社は予め支払時に約20%の源泉徴収をしなければなりません。)。

相続開始を知った日から4か月以内に、所得税の準確定申告をして納付する必要があることは変わりません。

 

ⅲ)他の株主の税負担について

基本的に前回のⅲと同じだと考えられます。

 

 

2回にわたってご説明してきましたが、会社に対する遺贈については、他の株主や相続人への税金上の影響がありますし、株式の時価評価額によってはそれらの税金が多額となることもあり、通常の相続の場合と比べて複雑となり、心配しなければならない点があることが分かってもらえるかと思います。

法人への遺贈は税負担のこともよく考えてから!ということになります。

 

皆さま、ご注意ください。