さて、コロナウイルスの関係で、脱ハンコ、ハンコ廃止(ハンコレス)が声高に叫ばれています。
もっとも、どういった場面でのハンコ使用の話なのかがきちんと前提が整理されないまま報道されていることが多いように思いましたので、ざっくりこの点について整理してみます。
まずは、どういった場面でのハンコ使用(押印)の問題なのかという点で、場面を大きく分けて見てみましょう。
1.対行政(行政に対する手続き)
2.会社内
3.会社外(一般の私人・会社間)
今、政府が強力にハンコレスを進めようとしているのが1(対行政)の場面の押印についてです(それ以外の場面についても拡大しようという動きもあります)。
他方、コロナウイルスの関係で主にテレワークの大きな障害になっていると言われていたのは、上記の1(対行政)の場面よりも、どちらかといえば、2(会社内)や3(会社外)の場面(特に2の場面)であるように思います。
社内決裁(や定型的な社外文書)の押印のためだけに出社しなければならないことがテレワークの大きな障害になっている、という問題ですね。
それでは次に、ハンコの押印を廃止するとなれば、それに代わる代替方法はどうなるのか、見てみましょう
もちろん、ハンコ押印を廃止しても、サインや添付資料で十分だとか、それで特に支障がないというような場合であれば、廃止するだけでかまいません。
そうでない場合に、テレワークの際にも使用できる代替方法としては主に、以下のようなものがあります。
a.電子署名(いわゆる「電子署名法」などの法的な根拠に基づくもの)
b.電子印鑑(電子決裁)
まず、aの電子署名は、認印のみならず、実印による押印にも代えることができるようなもので、いわゆる電子署名法(や商業登記法など)に基づいた電子証明書による正式な電子的署名です(なお、こういった法令に基づかないアプリ、ソフト独自の電子署名もありますが、ここでは割愛します。)。
電子証明書、電子署名といっても、人間のサインやハンコによる印影のように目に見えるものではありませんので、ご注意を。まだ誤解されている方がいらっしゃるので念のため。
(もっとも、ぱっと見で押印がないことが気持ち悪いと感じる人もいたり、正式なものか否かが分かりづらいなどの理由で、別途、目に見える形での印影らしきものを電子書面につけることができるようにしてあるサービスもあります。)
電子署名は通常、上記の1(対行政)や3(会社外)の場面で利用されています。
1(対行政)の場面でいえば、税務署に対する電子申告(いわゆるe-Tax)が典型例でしょう。
3(会社外)の場面では、主に会社間の電子契約という形で利用されています。
個人的には、タイムスタンプによる改ざん防止機能があるという点では、紙の契約書よりも優れている点があるように思います。
電子契約には、大きく分けてサーバ型とクラウド型(その中にも、作成者の電子証明書を利用するリモート型と、事業者の電子証明書を利用する立会人型があります。)があり、最近は手軽に利用できる立会人型のクラウド型の利用が広がってきているようです。
電子契約のサービスとしては現在、クラウドサイン、クラウドコントラクト、Agree、Docusignなど、様々な会社から提供されています。
次に、bの電子印鑑については、主に2(会社内)及び3(会社外)で利用されるものです。
基本的に、ハンコの印影をパソコンやスマホの画面上に目に見える形で再現したもので、従来の(実印ではない)ハンコの押印に代えて利用するものだと考えれば良いでしょう。
紙の書面への押印や正式な電子署名までは必要ない場面、つまりそこまで重要性が高くない書面に利用されるのが通常でしょう。
電子印鑑のサービスとしては、たとえば、シャチハタさんのこういったサービスがあります。
https://dstmp.shachihata.co.jp/products/cloud/
こちらは、オンラインで利用でき、テレワークのときに利用可能であるため、形式的な社内決済用の稟議文書や定型的な社外文書にハンコを押すためだけに出社しなければならないといった問題の解決に利用することができます。
稟議の過程や押印した書類がオンライン上に一定期間保管され、改ざんも防げるといったメリットもあります。
以上の点から、ハンコが利用される場面ごとに、異なるアプローチでハンコレスに向けた対策を試みる必要があることがお分かり頂けたでしょうか。
ですので今後は、今話しているのがどういった場面のハンコ使用についてなのかを意識しながら、話を聞いてもらうとよいと思います。
次回も、ハンコレスに関連する記事を掲載します。