税務署に対する再調査の請求は省いて直接審査請求をした方がよいのか否か

平成28年4月1日以降にされた税務署長の納税者に対する処分に関する不服申立てについて、以下の内容の国税通則法改正が同日施行されています(実際には色々な改正がされていますが、この記事に必要な部分のみを抜粋しています)。

 

・以前の税務署に対する「異議申立て」が「再調査の請求」という名称になった。

・納税者は不服申立てを国税不服審判所長に対する審査請求から始めても良いこととなり(直接審査請求)、処分をした税務所長に対する不服申立て(再調査の請求)をしなくても良いことになった。

 

※以前は、税務署長の納税者に対する処分に関して取消などを求める不服申立てについては、原則的には税務所長に対する異議申立(今の再調査の請求)から始めなければならない制度(異議申立前置主義、※例外的な場合に直接審査請求が認められていた。)がとられていた。

 

さて、この改正の影響で、国税庁のHP「平成28年度における再調査の請求の概要」、「平成28年度における審査請求の概要」によれば、平成28年度における再調査の請求の件数は前年度と比べて47.5%もの減少となっており、他方で、国税不服審判所への審査請求の件数をみると、平成28年度は前年度より18.6%の増加となっております。

しかも、平成27年度は、審査請求事件のうち「直審」(直接審査請求された事件)が368件、うち「二審」(異議申立てまたは再調査の請求を経た事件)が1730件だったのに対し、平成28年度は、「直審」が1473件と前年の約4倍に達し、「二審」が1015件と減少した結果、「直審」は審査請求事件全体の約17.5%から59.2%にまで上昇していることが分かります。

この点からすると、上記の改正の影響が大きく出ていることが分かります。

 

それでは、税務署に対する再調査の請求は省略した方がよいのでしょうか。

 

実は、個人的な方針としては、むしろ逆で、改正後も再調査の請求をするのを基本としています。

純粋な法令解釈のみが争いとなっており、処分をした税務署長に対して見直しを求めても、結論が変わるわけがないというような場合には直接審査請求をすると思いますが、それ以外の場合は再調査の請求からスタートするのを原則とする、ということになります。

 

さて、このように考える理由は色々ありますが、大雑把にいえば、審査請求までに十分な準備期間がほしいこと、税務署長から議決書をもらうことで、相手方となる税務署・国の処分をした詳しい理由、論拠や証拠を審査請求前に予め知って対策を練ることができること、再調査の請求は結論が出るまでに通常それほど時間がかからないことなどです。

 

税務署の処分に不満があって、再調査の請求や審査請求をするかどうか悩んでいる方は、ぜひ当事務所にご相談ください!