平成25年4月から始まった教育資金贈与の非課税制度をご存じの方は、多いと思います。
この教育資金贈与の非課税制度は、平成31年3月31日までの間に、30歳未満の受贈者が祖父母などの直系尊属から贈与等によって受け取った金銭を、一定の教育資金に充てるため、定められた手続きにしたがって教育資金口座の開設等をした場合には、1,500万円までは、一定の手続きを取ることによって贈与税が非課税となる制度です。
詳細は、国税庁のページをご覧ください。
教育資金の内容に制限がある他、手続きが色々と必要になります。
ところで皆さん、そもそもこの非課税制度の導入以前から、「扶養義務者間で生活費・教育費を目的として贈与された財産のうち、通常必要と認められるもの」については、相続税法21条の3第1項2号によって贈与税の非課税財産とされていることをご存じでしょうか。
【相続税法】
第21条の3 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
ここでいう扶養義務者とは、配偶者と民法877条で定める扶養義務者たる親族をさします(相続税法1条2の1号)。民法877条では、直系血族及び兄弟姉妹、3親等内の親族で家庭裁判所の審判を受けた者を互いに扶養する義務がある者と定めており、相続税法基本通達1の2-1では「三親等内の親族で生計を一にする者」も該当することとしています。
なお、非課税の贈与財産は、基礎控除額の110万円に含める必要もありませんし、上記の教育資金贈与の非課税制度のような厳格な手続きの定めもありません。
ただし、国税庁では、相続税法基本通達に以下のような内容の定めを置いています。
・21の3-3 「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるものを含む。
・21の3-4 「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らない。
・21の3-5 生贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいう。生活費等の名義で取得した財産でも、これを預貯金した場合や、株式の買入代金や家屋の買入代金に充てたような場合には、「通常必要と認められるもの」以外のものとする。
・21の3-6 「通常必要と認められるもの」は、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいう。
・21の3-7 財産の果実だけを生活費又は教育費に充てるために財産の名義変更があったような場合には、その名義変更の時にその利益を受ける者が当該財産を贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)
これらの定めのうち、特に21の3-5については要注意です。
法律で定められている「通常必要と認められるもの」という文言を必要以上に厳格に解釈しているように思われ、もしこの通達の定めを機械的に適用すると、例えば、祖父母からA口座に振り込まれた教育費等をそのまま放置し(あるいは別の物の購入代金に充て)、実際にはB口座から教育費等を支出していた場合、贈与税が課税されてしまうおそれがあることになります。全体としては祖父母が教育費を支出したのと同じことなのですが・・・。
この点について、税務署から課税されたり、無用な争いが生じたりしないようにするためには、必要な都度、必要な額を口座に祖父母などから振り込んでもらい、その口座から直接教育費等の支払いに充てる(口座から引き落とすか、口座から振り込む)のが最も安全ということになります。
扶養義務者間の生活費・教育費目的での贈与財産について、要件を満たせば贈与税が非課税になることを知らなかった方も多いのではないかと思います。
例えば、私立の学費や大学の学費は毎年ある程度の額になりますので、祖父母から孫に毎年学費を贈与をすることで、祖父母の相続税対策にもなる(兼ねられる)というようなケースでは、積極的に活用を検討してみるとよいかもしれません。
気になった方は専門家に相談してみられてはいかがでしょうか。