本日は、調査結果の納税者に対する説明に欠陥があったとしても、原処分の取消事由とはならないとした国税不服審判所の平成27年5月26日裁決をご紹介します。国税不服審判所はこの件で、従来よりも一歩踏み込んだ解釈やあてはめを行っているのではないかと思われます。
今回の裁決は、法令解釈として、税務調査の手続に単なる違法があるだけでは課税処分の取消事由とはならないが、国税通則法は、更正処分、決定処分、再更正処分等について、いずれも「調査により」行う旨規定しているから、課税処分が何らの調査なしに行われたような場合には、課税処分の取消事由となるものと解される(と従来どおりの解釈を示したうえで)、他方で、証拠収集手続自体に重大な違法がないのであれば、課税処分を調査により行うという要件は満たされているといえるから、仮に、証拠収集手続に影響を及ぼさない他の手続に重大な違法があったとしても、課税処分の取消事由となるものではないと解される、と(従来よりも一歩踏み込んだ判断を)しています。
そして、納税者は、今回の調査において、納税者に対する国税通則法所定の調査結果の説明が行われていないことは違法である旨主張するが、証拠収集手続に違法があるとは認められない本件においては、証拠収集手続に影響を及ぼさない手続である調査結果の説明に仮に瑕疵があったとしても、今回の課税処分の取消事由とはなり得ない旨の判断をしています。
この裁決の判断によれば、調査結果の説明という手続きについては、証拠収集手続に影響を及ぼさないものであり、仮に重大な違法があったとしても(全く説明がなかった場合も含まれるのではないかと思われます)、その調査をもとになされた課税処分は取り消されることはあり得ないことになります。
調査結果の説明という手続きは、納税者の権利保護のために国税通則法の改正によって設けられた制度ですが、その説明がきちんとされずになされた課税処分が取り消されるのかという点について、いずれ消極的な判断がなされるだろうと考え、以前にもそのようなブログ記事を書いておりましたが、私が思っていた以上に明確な(極端な?)法令解釈、あてはめがなされたな、というのが正直な感想ですね。