金地金が相続財産に含まれないとした審判所の裁決

本日は、相続税の処分を受けた納税者側の主張が認められ、処分が全部取消された国税不服審判所の平成27年5月8日裁決のご紹介です。

この裁決の詳細は、審判所のHPに記載のとおりです。

この事案で、国はおよそ、本件の被相続人が金地金(きんじがね)を取得した以後、①相続開始日の3年前頃は被相続人が多数の金地金を保有していたこと、②金地金の取扱業者等に対する売却の事実がないこと、③相続人等への金地金の贈与の事実がないことから、被相続人が金地金を売却した可能性が著しく低く、かつ、被相続人が金地金の贈与をした事実はないと推認されるから、相続開始日において、被相続人又は審査請求人の管理下には金地金が存在した、したがって金地金は相続財産である、というような主張をしていました。

 

しかしながら、審判所は、上記①から③までの事情は、相続開始日に金地金が被相続人の相続財産として存在したと認めるには十分とはいえず、他に原処分庁の主張事実を認めるに足りる証拠はないから、金地金は、請求人が取得した相続財産であるとは認められないとの判断をしたのです。

 

私も、過去にあるものが故人の財産として保有していたというだけでは、その後財産から外れたり、形を変えている可能性が多分にあり、これを完全に排除できないかぎり相続財産と認定することはできないだろうと思います。また、相続財産であると認めるためには、あくまで相続開始時に故人の財産として現存していたことを相当程度直接的に推認させる証拠がなければならないのではないかと思います。

今回の審判所の裁決の判断は、とても簡潔ですが、明瞭なもので、かつ経験則にも沿ったものだと思います。