個人が会社に物を高く買ってもらうと、一時所得が発生することがあります

今日は、東京高裁平成26年5月19日判決のご紹介です。

この判決の事案は、以下のようなものです。納税者(個人)は、上場のA社株式を、B社に対して、平成21年3月に一部を、11月に残りを、いずれも1株当たり550円で売却し、株式の譲渡代金全額を譲渡所得として申告をしました(ある意味では普通のことですね。)。

ところが、税務署長は、譲渡代金とA社株式の市場の終値(3月譲渡時290円、11月譲渡時426円)を基に算出した評価額との差額合計約3億3000万(B社が終値よりも高く買い取っていた部分)は、B社から納税者に贈与されたものなので、納税者の一時所得に該当する(譲渡所得ではない)として納税者に更正処分をしたのです。

補足ですが、一般に、個人が法人から受けた贈与については、一時所得に当たると理解されており(贈与税は個人が個人から贈与を受けた場合にのみ課されます。)、上場株式の終値(時価)と実際の売買単価との差額部分については、贈与があったものと評価されるので、差額部分が一時所得になる、という理屈です。

 

結論としては、高裁も地裁と同じく納税者側敗訴の判断となっていますが、私が改めて思ったのは、本来、物やサービスの値段は当事者間の交渉で決定してよいのであって、そうして決まった金額は全て物やサービスの対価といえるはずですので、必要以上に税務署が今回のような課税をすることは避けるべきではないか、ということです。

ただ、この件については、(1)純粋な第三者間の取引ではなく(納税者はB社の実質的なオーナーのようです。)譲渡代金が合理的に決定されたか疑問があることや、(2)取引の対象が上場株式で、時価の明確な指針となる金額があり、売買単価との差額もかなりあったことで、今回のような課税処分、ひいては地裁・高裁の判断がされたものだと思いますので、今回の判決の内容について違和感があるわけではありません。

 

個人としては会社に高く買い取ってもらえるのはうれしいことでしょうが、代金が時価よりも高いと、一時所得が発生したとして多額の税金を納めないといけない場合がある、ということは覚えておいた方が良いかもしれません。